インタビュー

第2回目はこしばてつや先生です。

こしばてつや先生

こしば先生は、2009年8月に行われたビースマイルプロジェクトの活動である、長崎の情緒障害児短期治療施設(以下、情短)の訪問にはじめて参加してくださいました。
今回から2回に渡って、情短を訪問した際にこしば先生が感じたことなどをインタビュー形式で掲載いたします。

photo:市川真名

破られた心の扉、もっと素直に…

Q.まずはこしば先生が現在連載している作品を教えてください。

講談社のヤングマガジンで「DeepLove[REAL]」を連載しています。この連載は5年目で、漫画を描き始めてからはデビュー前の下積みも数えると25年になるかな。

Q.こしば先生はデビューからずっと青年誌でご活躍されていますね。作風からは子ども達というキーワードはなかなか想像しにくいのですが、今回の訪問に参加したきっかけは?

きっかけは、友人でもある漫画家の本さんに声を掛けてもらったことかな。
でも以前にテレビで情短のドキュメント番組を見て、「一度そういった子ども達に接してみたい」とは思っていたんだ。
…あと単純に、長崎にはまだ行ったことなかったしね(笑)

Q.実際に情短を訪問してみてどうでしたか?

今年の8月に施設を初めて訪問した訳だけど、その時の感想は「子ども達と一緒にいる事って、こんなに楽しいんだ!?」って思った(笑)
俺、普段は子どもに興味無い素振りをしているけど、実は家では、子どもがおつかいに出るテレビ番組なんかを観て、「う、うう…」と独りで泣いてるタイプなんだよね。
子ども好きは自覚していたんだけど、情短の施設訪問がここまで楽しいなんて想像してなかったなぁ。
訪問する前は、覚悟とういか…子ども達に対して気構えがあったんだよね。

Q.それは「施設」の子ども達だからですか?

そう。でも施設についたら、いきなり子ども達が俺に向かって「このオジサンくさ~い!!」とか「変な帽子~!!」とか言う訳だよ。
「おーっ!来るね、いきなり!」と思った。これはもう、気構えなんて言ってる場合じゃないなと。子ども達は素直にコミュニケーションをとりたいだけなんだと。
それで俺も素直になって「しょうがないんだよ!オヤジになると皆くさいんだよ!(笑)」って。そのやり取りで何か楽になった。

Q.楽にですか?

普段大人って警戒しながら生きてるような所あるじゃない。駆け引きというか…、手の内を全部見せると馬鹿を見るみたいな、そういう感覚をどこかで少なからず持っていた。
でも、施設の素直な子ども達と直に接していると、自分も素直にならないと醜い感じがするんだよね。
だからかな、「オジサンくさ~い!」の一言で簡単に心の扉を破られた時は気持ちがすごく楽になった。

Q.子どもって凄いですね。

あ、でも俺、臭くないんだよ!(笑)
子ども達が言ってたのは柔軟剤の香りね!本当は良い香りだったんだよ!(笑)

Q.情短の子ども達は、虐待など過酷な家庭環境の中で成長してきた子も多いのですが、それを感じたエピソードはありますか?

やはり、愛情に飢えているのかな…と思った。心が穏やかでないというか、年齢の割りに幼なさを感じたかな。 例えば、子ども達と遊んでいると、別の子が「お兄ちゃん!こっち来て!」と強くせがんだり、遊び相手である俺を独占しようとしたりする。
俺も子どもの頃は変わった子で、幼稚園の時は、嫌な事があったらよく途中で帰っちゃったりしてた。幼稚園を抜け出して家に帰ると先生が心配して家に来る、それが嬉しかったんだよ。だってその瞬間は先生の愛情を独占できているから…。
今にして思えば、それはワガママな感情なんだけど、俺も小さい頃そういう子だったから、施設の子ども達もそういった部分をもっているのかな?と。
だから訪問してる間は少しでも愛情を与えてあげられたらなぁと思う。俺は、体験が人間を成長させるといういより、愛情が人間を成長させると思っているから。

Q.愛情が人間を…ですか?

そう。俺の身近な人間に引きこもりの人がいて、それを凄く感じた事があるんだよね…。

※次回につづく

宇和川さん漫画

■取材後記■

初めは「俺なんて話すことないよ~(笑)」と照れていたこしば先生ですが、長崎訪問はもちろんのこと、ご自身の子どもの頃の思い出など色々とお話して下さいました。

こしば先生、お忙しい中、本当にありがとうございました。

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